INDEX
vol.0045号(2011年10月10日号)
00【巻頭】『型から想起する』
01【連載】佐藤慧『サラーム・キルギスツアー2011
-天山の真珠に触れて-③イシク・クルの朝日』
02【雑感】笠原正嗣『新陰流とアフォーダンス』
03【告知】安田菜津紀 11月5日 トークイベント『写真を通して伝える、子どもたちの今』
04【告知】矢萩邦彦gapyearコラム『タブラ・ラサの時間』第3回配信!
05【後記】『内側への越境』
01【連載】佐藤慧『サラーム・キルギスツアー2011
-天山の真珠に触れて-③イシク・クルの朝日』
翌日、僕達はビシュケクを後に、東に位置するキルギス最大の湖、イシク・クルを目指すこととなった。快晴の青空がどこまでも続く中、僕達は一路東へ走った。その途中で10世紀から残る遺跡、ブラナの塔を訪ねた。ここはシルクロード上に位置しており、昔はその周辺の市場が大変栄えたという。塔の上からは果てしない草原が視界に広がる。ここを多くの人々が往来したのかと思うと胸が高まった。いつかシルクロードを端から端まで歩いてみたい。そんな思いが沸き上がってきた。人が古代の歴史へと想いを馳せるのはなぜだろう。きっとそこには遺伝子に組み込まれた太古への郷愁、脈々と受け継がれて来た人間の営みに対する畏敬の念があるのではないだろうか。傍らを吹く風に、数百年、数千年の人類の流れを感じた。

ブラナの塔は15世紀の震災で半分に崩れ、現在は25mだという。
昼食はキルギスの一般家庭をレストランに改装した場所で、伝統的な料理を満足行くまで食べた。キルギスでは客人をもてなすことは当然の美徳と考えられており、食べ切れないほどの料理を振る舞う。家計に余裕のない家庭でも、借金をしてでも客を歓待することがあるという。これは長く受け継がれてきた遊牧文化の特性ではないだろうか。次いつ会えるともわからない遊牧中の出会いに対し、「旅は道連れ世は情け」という価値観を醸成してきたのかもしれない。
昼食後の眠気にうとうととしながらしばらく走ると、あたり一面山脈に囲まれている平野に出た。その峰々は遙か高く、ここでは3~4千メートル級の山は普通の珍しくもないという。ちなみにキルギスの最高峰はポペーダ山の7,429メートルということだから、日本の誇る富士山も小さく思えてしまう。
日の沈む前にはイシク・クルへ着いた。キルギス最大の湖は、湖というには余りにも大きかった。琵琶湖の9倍もの面積を持ち、その最深部は668メートルだという。イシク・クルとは「熱い湖」をいう意味らしく、極寒の冬でも凍らないという不思議な性質からそう名付けられたという。湖底には多数の遺跡が水没しており、考古学者の探究心を刺激している。そんな湖の畔でのんびりと過ごしたあと、ゲストハウスのオーナーに招かれ夕食を取った。ここでもまた素晴らしい料理に迎えられ、各々のショットグラスには特上のウォッカが注がれた。キルギスにはもともとアルコール度数の高い酒はなく、ウォッカなどの強い酒はロシアから入ってきたという。みな客人の歓待のためにと杯を掲げ、数多くの乾杯が続いた。これはホームステイ先で聞いたことだが、キルギスでは乾杯を非常に大切にするという。日本で乾杯といえば、飲み始めの合図代わり程度のものであることが大半だが、キルギスでは飲んでいる最中にも何回も乾杯があり、その乾杯ごとに誰かが心を込めたスピーチをする。一緒に目の前にいる相手の幸福を念じ、心の底からの言葉で祈りを捧げた後に杯を合わせるのだ。何度も何度も杯は交わされ、夜は心地良い酩酊と共に深まっていく。最大の歓迎の印である、羊を丸ごと焼いた料理を平らげたあと、皆の笑い声の余韻に浸りながら外へ出た。湖の畔から空を見上げると無数の星が頭上に瞬いている。なんと美しい星空なのだろう。アフリカの奥地で見た星空が脳裏に蘇る。くっきりとした天の川が絹を中空に舞わせたように煌めいている。目の前で静かに揺れる果てしない湖面と無限の星空を前に、この世界の広さを感じた。こんなにも広大な世界の中で、ほんの僅かな命の時間を過ごし、こうして多くの人との出逢いを紡いでいく。なんて不思議で、素敵で、限りない喜びなのだろう。深夜まで笑い声が折り重なり、夜は更けていった。
翌朝、イシク・クルに昇る朝日を見たいと思い早起きをした。世界中どこに行っても朝日を見たいと思ってしまう。それは言葉に表しがたい程に美しく、神秘的だった。大きく息を吸い、また新たに始まるキルギスでの一日に胸を踊らせながらシャッターを切った。
太陽の中に人は神々しい何かを視る。生命の源。
(文+写真=佐藤慧)
02【雑感】笠原正嗣
『新陰流とアフォーダンス』
突然ですが最近、僕は「新陰流兵法転(まろばし)会」(http://goo.gl/IezzO)という所に所属し400年間受け継がれた新陰流の技を体得すべく毎週日曜に修行に励んでおります(笑) 一般的には、「柳生新陰流」という言葉が流布しているようですね。僕も最初はそう思っていなんですが、驚いたことに流派としての名は「新陰流」と言うようです。柳生は要するに受け継いできた家系の名前というだけのことで、技は新陰流と呼ぶのが正しいようです。
さて、そんな中まだ初めて半年程度の僕が気が付いたことを今回は書かせていただこうかなと思います。
僕とヤハギさんの共通項の1つは松岡正剛さんなんですけれども、この松岡さんが良く使われる言葉に「アフォーダンス」という言葉があります。アフォーダンスは元々認知科学の方で使われる造語で、一言でまとめると、「モノ(対象)が人間にそう行うように仕向ける作用」といったところでしょうか。例えば、ドアノブがあるとします。ドアを開けるためにはドアノブをいじらないといけません。それ以外のところをいじってもドアは開かないわけです。何を当たり前のことを言っているのかと思われるでしょうけど、こういったことをもっと細かく見ていくのがアフォーダンス研究の1つと言えるんですね。例えば、ちょっとオシャレな居酒屋さんとかで右利き用に作られたコップだと、親指がフィットするようなくぼみが付いていたりします。PCのキーボードだって高いやつだとちょっと曲線になっていたりします。エレベーターでの立ち位置って大体みんな同じ感覚で立ったりします。デパートの柱のクスミなんかもバッグがどこで擦れているのか、言い換えるなら私たちがどのあたりで避けているのかその足跡が見て取れたりします。そういう散策をしてみると、今まで見ていた日常的な光景が中々ショッキングな光景に変わったりしますので、是非お試しください。
このように僕たちはボールペンを持っているようで、実は持たされている可能性が見えてきます。アフォーダンスのニュアンスがなんとなくつかめたということで話を進めましょう。タイトルで、僕は「新陰流とアフォーダンス」と書きました。この二つがどう関係していくのか見ていきましょう。
刀の持ち方とかもすべて計算されている新陰流なんですが、そこは話が長くなってしまうので、また別の機会に書かせていただけたらと思います。今回は「隙」についてです。新陰流の稽古は基本的に一対一の形式で行います。教わる人一人に対して、教える人が一人就くわけです(あえて「先生」とは書きません。先生は宗主のことを指します)。姿勢、韜(ふくろしない)の持ち方、そして動き方(=「型」)などを一挙一動丁寧に教えていただけます。型の稽古は相手がこう動いたら自分はこう動く、今自分のどこが守れていないから、相手はそこを狙ってくるという解説を受けながら、一つ一つの動きを丁寧に覚えていきます。人間の身体を熟知した上で創られ受け継がれてきた型はまさにアフォーダンスの宝庫なんですね。
そして、面白いのが、自分がここを打たれそうというときにこちらが受けづらかったりする態勢だったりすると、そのままやられてしまいます。ですから、こちらが意図的に『隙』を見せてやる。そうすると相手はそこをめがけて打ち込んでくるわけです。しかし、こちらは意図的にスキを作ったわけですから、相手の行動を予想できているので、避けた上で相手の態勢が崩れたところに一撃を加える。自分の都合の良いところに上手く誘導してしまうわけです。相手の「隙」な所はこちらの「好」な所に早変わりするわけです。当時の武士が数寄の文化に傾倒するのもわかる気がします。
新陰流はこういう相手と自分の動きを一続きに「型」として保存してきているようです。間合いという言葉がありますが、これもそのアフォーダンスの一種ですね。自分が切りかかれる空間の限度を熟知しているからこそ、そこに入ってくる瞬間にすぐ動けるわけですね。写真学校だと、対象との距離をミリ単位まで目で把握する訓練を積ませられると聞いたことがありますが、個人的にちょっと似ていると思っています。対象が動いた後にシャッターを切るのではなくて、、コンマ何秒未来を撮る。入ってくる瞬間にこちらが動いて打ち込むことに似ていませんか?
また何か気が付いたら、こういう感じで記事にできたらと思います。
(笠原正嗣)
08【編集後記】『内側への越境』
柳生新陰流に興味を持ったのは、東大名誉教授・清水博博士のお話を伺ったときからでした。清水博士は、非常に先進的な場の研究をされていて、柳生新陰流は相対性理論を先取りしていた、というとても興味深い視点で研究をされていました。以来、ずっと入門しようと機会を伺っていたのですが、なかなか敵わず、笠原君に託したのですが、結果的に僕よりもピッタリハマっている感があり、最近ではなかなか精悍になってきました。文化を知るにはやはり内側に入ってこそです。
巻頭でも書きましたが、「いつもと違うことをしてみる」ことによって、色々な相乗効果が期待できると思います。疲れたら休む、あるいは癒やしを求める、という方向に行きがちですが、少々大変そうなことでもやってみると気分転換になったり、普段の仕事に活かせるアイデアを得たり、何より新しい出会いにも繋がります。是非、チャレンジの秋を楽しみましょう。また次号でお目にかかります。
(矢萩邦彦)
03【告知】 安田菜津紀 11月5日 トークイベント『写真を通して伝える、子どもたちの今』
カンボジアで活動する認定NPO法人 国際子ども権利センター(シーライツ)の皆様と共に、
トークイベント『写真を通して伝える、子どもたちの今』を開催させて頂きます!
≪日時≫11/5(土) 19:00~
≪場所≫表参道C's fort
お申し込みはこちらから!→ http://www.c-rights.org/2011/10/115.html
写真を通して伝える、子どもたちの今
04【告知】矢萩邦彦 gapyear.jp コラム『タブラ・ラサの時間』第3回配信!
「gapear.jp」のサイトにて、連載中のコラム『タブラ・ラサの時間~人生のキャンバスを作るために~』第3回を配信して戴きました。今回は、越境のために自分の内と外の境界について考察しながら、災害支援という方法について書かせて戴きました。お読み戴ければ幸いです。
第3回『自分の内側と外側』
http://gapyear.jp/archives/790
第1回『日本を選択いたし申候』
http://gapyear.jp/archives/124
第2回『越境する勇気』
http://gapyear.jp/archives/495
【再掲告知】佐藤慧10月22日・23日写真展『魂のかけら』
佐藤慧の写真展『魂のかけら』が九州はAPUにて開催されます。
APUの学生さんをはじめ、お近くの方は是非ご覧戴ければと思います。
10月22日・23日 10:00~17:00
立命館アジア太平洋大学 A棟2階 コンベンションホールにて 入場無料
主催 APU-NEST
問い合わせ先 yukana09@apu.ac.jp 代表中村まで
【再掲告知】11月06日 矢萩邦彦・鏡明塾『インテリジェンス入門』『日本史研究:鎌倉時代Ⅰ』
鏡明塾
さて今回は『インテリジェンス入門』と題しまして、情報の扱い方についてやってみようと思います。日本語の情報は主にインフォメーションのことを指しますが、そのインフォメーションを組み合わせることによって色々な可能性が見えて来ます。手に入る情報をいかにうまく使いこなすか、というお話しです。
11月12日、関西鏡明塾決定です。15:05~16:50と17:05~18:50の2講座です。様々な「知」をご用意してお待ちしております。是非ご参加くださいませ。
[世界科一般コース]13:05~14:50
・神奈川県民センター(302教室)
・テーマ『インテリジェンス入門』
[世界科中高コース]17:05~18:50
・神奈川県民センター(303教室)
・テーマ『日本史研究:鎌倉時代』
★全ての講座とも先着20名とさせて戴きます。 (単発で受講されても大丈夫です)
・神奈川県民センター(神奈川区鶴屋町2-24-2)
「横浜駅西口」より徒歩5分
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/02/0051/center/access.html
参加費用は各コースとも一般・大学生2500円、中高小学生2000円(会費・教材費)です。 (※中高生が一般コース、一般の方が中高生コースを受講することも出来ます) (※参加費は当日お持ちください。振り込み希望の方はお申し出ください) 申し込みはメールにて承ります。
タイトル【鏡明塾予約】日付・コース・名前(参加希望者全員分) で
yahagi.sa@gmail.com
までお願いします。ご要望、ご質問等もこちらまで。 では、みなさんの御参加、お待ちしております!
【再掲告知】佐藤慧・安田菜津紀 11月11日~13日『ASYLUM2011』@沖縄
那覇市・桜坂での音楽イベント『ASYLUM2011』にて、佐藤慧と安田菜津紀がトーク出演させて頂きます!タテタカコさんをはじめ、素晴らしいアーティストさんばかり。
ぜひお越し下さい!
http://t.co/tePGRXmj
ASYLUM2011
【再掲告知】 安田菜津紀 9月26日『J-WAVE TIME TABLE』
J-WAVEフリーペーパー『J-WAVE TIME TABLE』に、福島で坂本龍一さんを撮影させて頂いた安田菜津紀の写真が掲載されます。
都内近県のCDショップやiPhone/Androidアプリなどでご覧頂けます。
→ http://www.j-wave.co.jp/topics/1108_tt.htm
J-WAVE TIME TABLE
【再掲告知】安田菜津紀 「クリンスイ」のラジオCM出演!!
≪関東≫J-WAVE 毎週金曜6:40- 50am 「JK RADIO」 (ジョン・カビラさんナビゲート)
≪関西≫FM802 毎週日曜10:35-10:42am 「SUPERFINE SUNDAY」)
安田菜津紀が「クリンスイ」のCM出演をさせていただきます!!
お時間のある方はぜひお聞きくださいませ!!
http://bit.ly/qGnV18
クリンスイ
【再掲告知】安田菜津紀 11月23-28日 安田菜津紀フィリピンスタディーツアー
11月23~28日の6日間、「フォトジャーナリスト安田菜津紀と行くフィリピン スタディツアー」第2弾の告知を開始致しました!
フィリピンに生きる人々の今に、一緒に触れてみませんか?
詳細はこちらです!
http://amba.to/oFT3B4
【再掲告知】佐藤慧2011年第36回「視点」入選
佐藤慧がザンビアで撮った写真「ゴミの中の祈り」が、
2011年第36回「視点」写真公募展にて入選いたしました。
全国巡回の予定は下記の通りです。
9/6~9/11 愛知県美術館
10/18~10/23 宮城県美術館
11/16~11/20 アストプラザギャラリー(三重)
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/02/0051/center/access.html
【再掲告知】
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卓上カレンダー発売中!!◆◇
今を大事に生きることと、
過去や未来を無視することは違います。
それは、長い歴史においても、ほんの最近のことでも変わりはありません。
関わりの中で、うねりながら流れていく僕らの、1つの物差しになればと願い、今年もカレンダーを作りました。
ご購入希望の方は、
タイトル「アフタモード商品購入希望」とした上、
・お名前
・ご住所
・電話番号
・部数
・返信用メールアドレス
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までメールをお願いします。
折り返し代金の合計と、お振り込み先をご連絡いたします。
安田菜津紀作品集「アンダンテ」も販売しておりますので、そちらもよろしくお願いします。
詳しくはアフタモードホームページ
http://www.aftermode.com/
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上部メニューバーの【STORE】をクリックしてください。
【再掲告知】
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